ウィーンを発ってハンガリーに入り、国境沿い、つまりドナウ川沿いに東
に移動すると、エステルゴム(Esztergom)という町に出る。この町や、もう
少し東よりにあるセンテンドレ(Szentendre)などを「ドナウ・ベンド」と呼
ぶそうだ。東進するドナウ川が南に方角を変えて首都ブダペストに向かうあ
たり。私が買ったオーストリアのガイドには、プラハとブダペストも紹介さ
れているが、雄大なドナウ沿いの2つの静かな町については載っておらず、
ほとんど予備知識はなかった。
エステルゴムも他の町と同様、大聖堂と教会が観光の定番だが、この町の
大聖堂と教会は他とはひと味異なっていた。大聖堂”=写真左=の宝物コレクションは金
や宝石をふんだんに使った一品ぞろい。マリア・テレジアからの贈り物も展
示されていた。
教会に入って印象深かったのは、第2次大戦どころか、ず〜っと昔のオス
マン・トルコ時代の傷跡がしっかりと残されていたこと。モスクにされ、彫
像の頭が壊されたり、顔をつぶされた、古い礼拝堂を教会の隅に移設し保存
してあるのだ。
ドナウ川は、ドイツから黒海まで全長約2800km。ハンガリー国内は
600kmもある。ドナウ・ベンドのドナウ川は、砂浜や波の音がまるで海
を思わせる趣だ。ちなみに“ドナウ”はドイツ語で、“ダニューブ”は英語。
ハンガリー語では“ドゥナ”(Duna)。首都ブダペストで道に迷ったら「ドナ
ウ川の方角を聞けばよい」と教えられたが、一度迷って“Duna?”と聞いた
らわかってもらえず“ダニューブのことか?”と問い返された。