予想もしないお客さんがいろいろ現れて戸惑ったが、経済畑一筋の記者時代にはあまり縁のなかった役所との付き合いも、貸しホール業ならではであった。消防署、保健所、警察etc...。随分、教えられることが多かったように思う。
例えば、興業場法などという法律があって、毎月一定回数の興業、例えば映画などを催す場合、ホールは同法に基づいて認可を得なければならない、という。それにはトイレや階段といった設備面の基準がいっぱいあって、オーバルホールはとてもじゃないが、クリアできない。となると、運営面で同法に触れないよう注意するしかない。
催しによっては消防署に届け出が必要なものがあったので、消防署との接触も頻繁にあった。借り主によっては、明らかに手抜き工事をやって「配線を触ると熱い」などという怖いケースもあって、たまたまやって来た制服姿の消防署員を「おう、グッドタイミング」とホールに引っ張って行き、ニラミをきかせてもらったこともある。
最初のうちは、なぜ現れるのかイマイチよくわからなかったのが、警察。公安担当の警部、警部補さんがふらりと現れるのだ。「きょうは何か?」「いや、別に」などと禅問答で終わるのが定型パターンだが、そのうち、ホールの借り手に“マーク”している対象があるなとピンとくるようになった。しかし、予約簿を点検しても全然見当がつかないこともあったから、警察の情報は我が方よりかなり先行していたということだろう。幸い、在任中、警察や消防にアブラをしぼられるトラブルは一度も経験しなかった。